カレントフックの罪

来週、仲間の何人かがパラオに行きます。同行イントラが台風っ娘なので季節外れの強烈な低気圧を呼ばなければいいけど…。

さて、パラオでのダイビングにおける必須アイテムは二つ。

  • シグナルフロート
  • カレントフック

シグナルフロートは万が一のときの備えですが、カレントフックは多くの人が使うことになります。でも、これがけっこう厄介な代物だったりするんですよね。こんなのを発明したばっかりにブルーコーナーの環境破壊が進んでしまって…。

カレントフック
私のカレントフック。他者と高さが同じにならないようロープを3mにしてあります

カレントフックは時に激流に見舞われることもあるブルーコーナーやニュードロップオフに潜る際に重宝します。ブラススナップをBCDやウェイトベルトのDリングに固定しておき、もう片方のフックをドロップオフのへりの岩場に引っかけてBCDにエアを入れるとロープがぴーんと張って凧あげの凧状態になれるので、中空に留まっての観察や撮影が楽になります。時間帯にもよりますが、グレーリーフシャークなどがわんさか輪になって他の魚を捕食するシーンがじっくり見られたりするわけです。

でも、不意に流れが変わったりするとロープがたわんで付近のサンゴを巻き込み、すぐさままた流れが強くなった際にへし折ったりすることも。あれって罪悪感を覚えるのですよね。もちろんフックをかけるだけでも岩場が僅かずつ削れていくし。

おまけに昔はブルーコーナーは中・上級者向けポイントと呼ばれていたものの、今ではコース取りのルールやガイディングも発達してライセンス取り立ての初心者も連れて行くところになっています。おかげでブルーコーナーのヘリは昔に比べてつるんつるんになり、棚上の生物相も変わってしまいました。

なので、10年以上前のパラオを知っている人は口を揃えて「ブルーコーナーはつまんなくなった」と言いますよね。私もそう思います。

本来ならシパダンのように入域制限をした方が良いけど、島状のシパダンとは違って外洋のブルーコーナーは取り締まりも難しい上、ダイビング客が減りかねないので実施は無理。

そこで私の知人のOさんなんかは「この際、ブルーコーナーのフチ沿いに鋼鉄の輪っかをたくさん打ち込んでおけ」と提唱しています。そうして岩ではなく、そちらにフックをかけるようにするのだと。大自然の光景の中に人工物があると興ざめすることも多いけど、まあそれもダイブサイトの名物の一つになるだろうし、何よりもエコ、環境へのダメージが減るはず。私はこのプランに賛成です。

ああ、それとカレントフックがあると流れの中の停留こそ楽だけど、あれはあれで辛い時間になります。体の中心あたりにフックの端があるため、上半身にも下半身にも水の抵抗を受けてバックブリーカー状態。激流時はけっこう腰が痛くなります。

よく「流れが強い方が見どころが多い」と言うけど強過ぎる時は魚もまばら。
ただただしんどいだけです