毎年お盆が明けたらデジカメ新製品の発表ラッシュなのですが、今年は出足が鈍いですね。まあそんなご時世なのかな。もはや年に2回も新製品を出していられないと。
このblogのアクセス統計を見ると、1年以上も前に書いたOM-D用の水中ハウジングにはこちらを買うべしへのアクセスがコンスタントに続いています。OM-D E-M5は人気機種なので、水中写真にも使ってみたいという人が多いのでしょう。
そろそろ上位モデル(?)のOM-D E-M1とやらが発表されそうな感じですが…。
いや、水中写真について少し勉強した人は、純正の水中ハウジング(防水プロテクター)を買っていいものか迷ってこのblogに辿り着いているのかも。さもありなん。
ということで、改めておさらいしてみます。
■ セットアップ
まずはその純正ハウジングですが、設計があんまりよろしくなさそうです。こちらのビデオの6分半以降で語られています。これまで数えきれないほどの水中撮影機材を扱ってきた野本さんがセッティング方法が解らなかったなんて、そりゃ作った方がダメでしょう。せっかくレンベまで行ったのに…。
さすがに取説はとっくに改善されてるかもしれないけど、そもそもの設計思想が怪しい気がします。一眼のカメラでフラッシュをポップアップさせずに光らすなんて聞いた事がないし。
■ 12-50mmズームレンズ
ちなみに野本さんの動画でも触れられていたOlympus M.ZUIKO DIGITAL ED 12-50mm F3.5-6.3 EZというレンズは35mm判換算で24-100mm相当なので、あまり水中向けではないと思います。もちろん使えないわけじゃないけど、はっきり言ってしまえば「画角がコンデジ並」なのですよね。だったらワイド端が24mmで大き目のCCDを搭載したコンデジ(Canon PowerShot S110、Panasonic LUMIX DMC-LX7、Nikon COOLPIX P330あたり)の方が使い勝手が良いのではないかと。システムチャートを見るとギアが載ってないからズームも使えなさそうだし。
コンデジなら安くて携行も楽な上、ワイドコンバージョンレンズなどを付けて画角を広げられます。 もちろんOM-Dの方がCCDが大きくオートフォーカスも速かったりと基本性能面の優位性はあるけど価格は約4倍。それでいて撮れるワイド写真にそこまでの差は出ないんじゃないかな。特に経験の浅いアマチュアが使う場合は。
■ マクロレンズとしての性能
このレンズには簡易マクロモードもあるけど撮影倍率が0.36倍(35mm判換算 0.72倍)の「なんちゃってマクロ」。マクロ指向だったら最初から撮影倍率2倍のマクロレンズを付けた方が格段に有利です。
そもそもコンデジが「標準ズームレンズを付けた一眼カメラに準じたレンズ一体型の小型カメラ」なわけですが、Olympus M.ZUIKO DIGITAL ED 12-50mm F3.5-6.3 EZというレンズは、その逆の発想の「コンデジを模した一眼用レンズ」っぽいです。何なんだか。まあ、そもそもメーカー希望小売価格が5万円を切る安っぽいレンズなんだけど。
■ ワイド指向なら
また、ワイドを撮りたいなら、より画角の広いM.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6の方が良いような。
ただし、M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6は沈胴式でワイド端時の全長が49.5mm。対して純正レンズポートPPO-EP01は奥行が114mmあります。ワイド端側で使う場合、ポートの前面から6cmほども奥まっているので四隅がケラレやしないかと懸念しているのですが。もしそうならこのレンズを使う意味はなくなります。
■ マクロレンズ構成
昨年発売されたマクロレンズM.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macroは良さそうですが、システムチャートには対応のギアが載っていません。ってことはマニュアルフォーカスは不可能なわけだ。せっかく35mm判換算で120mmと、警戒心の強いハゼも狙えるマクロレンズなのに魅力半減です。
他にもアダプター類をかませばフォーサーズ用のZUIKO DIGITAL ED 50mm F2.0 Macro、ZUIKO DIGITAL 35mm F3.5 Macroといった短いマクロレンズも使えるけど、やっぱりマニュアルフォーカスが利用できない残念な仕様。
■ 評価
そう、概してこんな感じ。Olympus純正品で揃えようとすると、どのレンズで撮るにしても何かしら妥協を強いられ、そこそこの中途半端なセットにしかならないような…。
■ まともに見える唯一の構成
唯一良さげなのは、フォーサーズ用のZUIKO DIGITAL ED 8mm F3.5 FisheyeとフィッシュアイレンズポートPRO-E04の組み合わせでしょうか。使ったことはないけどスペック的には申し分ありません。
■ 代替製品
よって純正ハウジングではなく、こちらの製品がよかろうと。Nauticam NA-EM5。
純正品より値は張るものの、そもそもOM-Dクラスのカメラで水中写真を撮りたい人なら水中ハウジングの予算もケチってはいかんです。そうそう買い替えられないのだから「向こう10年超分の投資」だと思って最高の逸品を選ぶべきでしょう。
PENシリーズならともかくO
M-DはOlympusのマイクロフォーサーズの最上位機種。安価な純正ハウジングで妥協するのではなくNauticamを選んだ方が後々のためになるではずです。特にアマチュアのカメラダイバーにとっては、写真のクオリティはもちろん腕前の伸びしろに関わってきます。
ああ、もちろん何年経とうとも、こだわりのない凡庸な写真を撮り続けるつもりなら純正ハウジングでもいいか。でも、そういうスタンスなら、そもそもこのカメラは宝の持ち腐れというもの。 わざわざ水没リスクにさらすのもどうだか。OM-Dはいっそ陸用にして、別途良さげなコンデジを水中撮影用にあつらえた方が賢明だと思いますよ。
私の知り合いでも明確な目的意識なしに憧れでもって一眼の水中カメラセットを買った人は、決まって使うのは最初だけで、次第に海に持って入らなくなります。
■ 製品特徴
このハウジングの優位点はアルミ削り出しで堅牢な上に、レンズに合わせて最適なポートを選べること。水中撮影向きと言える以下のマイクロフォーサーズレンズに最適なレンズポートが選べます。
- Panasonic LUMIX G VARIO 7-14mm F4.0 ASPH
- Panasonic LEICA DG MACRO-ELMARIT 45mm/F2.8 ASPH./MEGA O.I.S. H-ES045
- Panasonic LUMIX G FISHEYE 8mm/F3.5 H-F008
結局のところ、Olympusの水中ハウジングの泣き所はここでしょう。水中撮影に申し分のないワイド端20mm未満のワイド&フィッシュアイとマクロのマイクロフォーサーズレンズをPanasonicに抑えられているから、そこを外したレンズポート設計になってしまうという。この際プライドを捨てて水中用だけでもPanasonic製品に乗っかっちゃえばいいものを。 しかも長さと画角の違うさまざまなレンズに対応するため、大振りな共通レンズポートで済ませてしまうという強引さだし。
それに、NauticamのハウジングではOlympus M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macroでマニュアルフォーカスも可能。マクロ写真の作品作りがより高精度に行えます。
しかも、水没を検出してブザーで知らせるセンサーまで標準で付いているし、視度調整付きのスーパービューファインダーも付けられるので、もし老眼が進んでも大丈夫です。
香港のNauticam製の水中ハウジングは私もNikon D7000用を使っていますが、非常によく出来た、およそ欠点の見当たらない優れものです。なるほどオーナー直々に水中撮影に勤しんでいるだけのことはあります。
というわけで、私としてはOlympus純正のハウジングではなくNauticam NA-EM5の方を強くお勧めします。
■ ご相談は…
なお、OM-D関連に限らず水中撮影機材のことで何かしら迷ったり不明な点があれば新宿西口のアンサーに相談するのがいいと思います。きっとスペック面だけでなく機種特有の癖まであれこれ丁寧に教えてくれますよ。