顧客を捨てるコナミスポーツ

コナミスポーツのダイビングスクールが来年3月末をもって終了する予定です。その後の受け皿も用意されないらしいので、我々会員は「お前らはもう客じゃないから、散らばってどっか行けよ」とばかりに見捨てられるのでしょう。コナミスポーツ、なんてとんでもない決断をしてくれる企業なのだろう…。

エグザスダイブカレッジのステッカー
秘蔵のエグザスダイブカレッジのステッカー。 コナミスポーツダイビングスクールの前身ですね

いや、同社のダイビング事業がどうにも不採算続きで、もはや存続が困難というのなら致し方ないと思います。でも、どうもそうではなさそうなのですよね。なぜなら年会費の値上げや店舗の再編、営業時間の短縮といった試行錯誤がまったく見られなかったので。馴染みの店長も「ちゃんと売り上げてた」そうですし。ならば「90万人規模のフィットネスに比べたら、せいぜい数千人が相手の商売なんぞちっぽけでやっておれん」ってことなのか、あるいは「設備とトレーナーを用意すれば大勢をさばけるフィットネスのような旨みがない」と見切ったか…。

より小さなところが頑張っている中で、規模や施設、集客力で圧倒的に有利な同社が我先にと逃げ出すわけですから、無理解な経営トップが突如へそを曲げたとしか思えません。きっと自社のサービスすら自らは使ったことがないような、お偉い方々なのでしょう。私の勝手な推測ですが…。

ああ、ダイビング事業を畳む理由として思い当たる点が一つ。今春、同社は不幸な死亡事故の当事者となったことがありました。確かにダイビングは人間が通常なら生存できない環境下のレジャーなので、ごく稀にそういうことも起ります。でも、それは他のスポーツやエクササイズでもあること。運動中に心臓発作で倒れるとか。確率から言えば、とりわけダイビングが危険とまでは言えないわけです。

しかもコナミスポーツはスパルタではなく、むしろ過保護的なサービスを提供してきた方です。だったら業界最大手としてやるべきことは、そそくさと事業を畳むのではなく、率先して更なる安全性の向上に尽力することでしょう。でなければ亡くなられたその方も浮かばれません。自身がきっかけで好きだったダイビングの事業体がなくなるなんて…。

そして何よりも拙いのが経済的なマイナス面。同社がダイビング事業からの売り上げを失うだけならまだしも、国内外の関連業界に少なからずダメージを与えます。

フィットネス業界最大手のコナミスポーツのダイビングスクールは全国に19店舗あり、その他の店舗にも随時分校を開きながら毎年大勢のダイバーを誕生させてきました。そして多くのダイバーが憧れるのは沖縄や小笠原、パラオ、モルディブなどの南国リゾートの海。そういった海へのツアーでは毎回十数万円~数十万円 × 人数分のお金が動きます。旅行社、航空業界、現地のホテル、ダイビングサービス、飲み屋さんなどが潤ってきたわけです。

もちろんコナミスポーツ以外にもダイビングスクールはたくさんありますが、紹介もなしに街のスクールには入りづらいという話はよく聞きます。中にはイジメのような過酷なトレーニングを課したり、何も解らないうちから何十万円もする機材一式を強制的に買わせる悪質なところもあるようですし…。その点、コナミスポーツには広く名が通っている安心感や敷き居の低さがありました。

それでも大手のコナミスポーツが退くことで他社が潤うなら良いのですが、そうはならないでしょう。なにしろコナミスポーツのフィットネス会員がスタッフに勧誘されたり、店舗やPOP類がふと目に止まって興味を持つというのが定番のコースだったので。そういった人たちは他所に流れることもなく、単にダイバーになる切っ掛けを失うだけです。

おそらくコナミスポーツの影響力、経済への貢献度は彼らが考えている以上です。コナミスポーツでライセンスを取った人たちがスクールを巣立ち、思い思いのダイビングサービスやツアーを利用しているのだから。ここで新たなダイバーの養成をやめれば関連業界に「コナミ不況」「コナミショック」が起こって少なからず恨まれるでしょうね。コナミスポーツのフィットネス会員にも、その業界の人が大勢いるはずなのに…。

いや、そもそもコナミスポーツの親会社のコナミは「いかにして人々の余暇を充実させるか」という観点から、そのための商品開発やサービス展開に日々腐心している企業のはず。にもかかわらず子会社が真逆な決断を下すとは…。

確かにイベントを見る限り日本のダイビングの業界は縮小傾向にあるようですが、その一方でダイビングは、この厳しい経済状況下でありながら、いまだ個人に数十万円単位の消費をさせる力を持っている希少な分野なわけです。年に1~2回の一点豪華主義的な消費意欲の受け皿需要をみすみす放棄し、関連業界を巻き添えにしながら撤退するのはあまりに身勝手でしょう。

大きく伸びることはなくとも底堅く売り上げる商品力が保たれていて、競争条件の優位性もある以上、経営的なテコ入れならいくらでもやりようがあるはずなのに。

てなわけで、コナミスポーツには、ちゃんとした引き継ぎを行ってから撤退していってもらいたいと切に要望します。

一番好ましいのはダイビング部門の分社化でしょうか。もしくは他社に事業売却して、改めて業務提携を結ぶとか。経営が変わってもおおむね体制が維持されれば、スタッフ、会員、関連業界も一安心できますしね。

ぜひ、そうしてもらえないかな…。

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“顧客を捨てるコナミスポーツ” への4件の返信

  1. 経営者からすると、お店を畳む費用というのが、ものすごくデカイのです。それが赤字になってからとか、とんとんになってからだと、もう遅いのです。売り上げがまだある時点で撤退しないと間に合いません。賃料や退職金、今まで資産の部に計上されていた機器類が、すべて負債となって襲い掛かってくるからです。(特にお金持ちの)ダイビング人口は減る一方ですからダイビング事業を売るにも買い手がつかなかったのでしょう。

    1. 経営者視点さん、コメントありがとうございます。

      なるほど。勉強になります。海の家にしてもその夏中に後の撤収費用も見込んで売り上げるのが鉄則ですしね。

      ただし、私が漏れ聞いたところでは、廃業の発表後は各方面から引き合いがあり、良い話もそうでない話もすべて断ったそうです。よって事業が売れなかたっというよりも「コナミ側があらゆる関わりを絶った」という印象です。お店を畳むといってもコナミのダイビング事業は既存のスポーツクラブ設備の片隅でやってましたし(倉庫は多少多めに占有していたと思うけど)。

      確かにダイバー人口は減リ続けてていますが、各スタッフが固定客を掴んでいたのでコナミの割高な同行ツアーにしても盛況でした。「10年後には不採算になるかもしれないから、テコ入れなんかせず今の内に足を洗うんだ。よって全店舗廃業!」とかでは客としては釈然としない思いが残ります。

      まあ、コナミは2001年のエグザスの買収時から「ゴルフとダイビングは要らない」というスタンスだった(結局、抱き合わせで買わざるを得なかった)らしいので、昨年春の不幸な事故を機に、ついにそれが達成されてしまったと私は理解しています。

  2. エグザスダイブカレッジ本牧は、店舗商品の横流しをしていた栗田インストラクターがお縄になり激怒した上層部がダイビング事業を潰したのです。

    1. 懐かしい。本牧店、場所的に潰すのは不自然だし、槇原敬之氏らもメンバーだったと聞いてたけど、なるほど、そんなことがあったのですね。

      まあでも昔の話だし、エグザス&コナミスポーツは脳筋組織の印象だから、さもありなん。

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