米Microsoftがいわゆるタブレット機を発表しました。「Surface」の名称を使うのだそうな。先代のSurfaceはテーブル一体型だったのですがね。
さて、このSurfaceはいくつかの意味で興味深いです。一番の注目点は「iPadに張り合えるか」、そして二番目は「PCベンダーとの関係はどうなるのか?」。しかもこの二つは密接に関連しています。
先行発売されるモデルはARMアーキテクチャなので既存の膨大なWindowsアプリはそのままでは動かないはずですが、Microsoftは例によって「開発費は持つからアプリを移植して」の作戦でソフトウェアハウスを口説きまくっているので、遠からず対応アプリは増えるはず。よって鍵はARMで動くWindows RTがiPad並に使えるものになっているか。完成度と使い勝手の基本的な部分ですね。一応、ユーザーインターフェースのMetro UIは前評判が良いようです。
でも、それが仮に申し分ない完成度だったとしてもMicrosoft Surfaceが先行するApple iPadに追いすがれるかは何とも。というか私はかなり厳しいと見ています。それも絶望的に。なにしろ世間では「諸事情でMacは買いづらかったけどiPadなら積極的に導入できる」という企業や団体も多いので。Surfaceが発売される年末商戦までにはiPadの導入実績はさらに増えているし、Windowsのときとは打って変わって、買ってもらうには「あえて主流のiPadではない理由」が必要になるのでしょうから。
そしてSurfaceの先行きが厳しいと思うもう一つが、PCベンダーとの関係性が確実に悪くなるだろう点。これまでMicrosoft純正品のWindows PCはなかったのに今度はそれを出してきたわけです。PCメーカーにしてみれば、これまでは運命共同体だったはずの取引先が競争相手に変貌するわけです。しかも肝心のOSを一手に握っているというタチの悪さ…。
よってPCメーカー各社はApple、Google、Microsoftのどことどのように組むのか、あるいは組まずにビジネスを展開するのかを熟考することになります。ならばMicrosoftにしても、Windows PCのときのように陣営のパートナー企業の波及力を頼んで一気にシェアを拡大するという作戦は今回は取れそうにありません。
折しも今朝のNIKKEI NETにはこんな記事が出ていました。
NECや日立製作所など国内の企業70社は米アップルの製品の業務利用を促進する一般社団法人「iOSコンソーシアム」を21日に設立する。アプリケーションソフト(アプリ)を共同開発するほか、技術者も育成し、利便性を向上させる。
とのことです。ポストPC時代にMicrosftがパートナーとなり得ないと判断したかどうかは解りませんが、Surface投入までの何ヶ月かを無為に過ごすわけにもいかないので、各社とも既に実践可能であるiPad系に注力することにしたのでしょう。
もちろん国内外では事情が違うにしろ、結局、Microsoft Surfaceは「出遅れたこと」と「味方が少ないこと」がネックになり、かつ「iPadほど使いやすくなかった」が致命的で、大差でもってApple iPadの後塵を拝し続けることになるというのが現時点での私の予想です。