さあみんな海に行こう!

私の知人が何人か3連休にかけて海外にダイビングに出かけます。彼らも以前は年に何度もリゾートに出向くような感じではなかったのだけど最近はそうですね。そういう私も同様。前は年に1~2回、南の島に行かれれば満足だったのが今では年間6回を越えるペースで海外や沖縄に足を運ぶようになりました。

各人で事情は違うにせよ共通の背景はいくつかありそうです。

1. 円高が進んで海外旅行に割安感がある

もっともこれの信憑性は怪しいですね。一方で燃油代も上がっていますし。例えばパラオのクルーズ船ツアーは円安だった昔の方が圧倒的に安価でした。なにしろクルーズ船は一度の航海に何万ガロンもの軽油を使うので。陸ステイのツアーはそこまでではないにせよ、ダイビングボートにも例外なく燃油が必要です。

2. 経済の停滞で休暇が取得しやすくなった

この影響は確実にありましょう。多くの業界で、かつての休日を休めないほどの忙しさがなくなったはずです。

3. 総じて物欲が減退している

実際、私は欲しいと思うモノが少なくなりました。とはいえ消費への意欲はあるので「そうだ、南の島にダイビングに行こう」となるわけです。以前は何十万円もするAV機器を背伸びしてでも買ったものですが、今はもう。

4. デフレで物価が下がった

今や40型の液晶テレビが5万円、Blu-rayレコーダが3万円、パソコンに至ってはケータイよりも安価というありさま。衣料ではUNIQLOが国民の制服であるかのように幅を利かせ、牛丼は300円していません。日用品の多くが100均で揃い、必要十分で選んでいけばモノを買うときの負担感は確実に低下しています。

所得が横ばいだったとしても住宅ローンや子供の教育費などを抱えていないなら、経済的な余力を他に振り向けやすくなったと言えそうです。

5. 潜在的なストレス

難しい時代に差しかかり、多くの人が癒しを必要としているのだと。ダイバーなら意識が海に向かうのは当然でしょう。

6. 大震災の影響

これもありそう。つまり、あのとてつもない震災によって、あらためて人の命のはかなさとモノを持つことへの羨望や執着が薄れ、人々が「買うなら心に残る体験を」という考え方に変わったと。

7. 環境変化への警戒感

これは私だけかも知れませんが、昔よりも海が劣化している気がしてなりません。劣化という言葉は不適当かもしれませんが、温暖化や環境破壊によって海の中は確実に変化しているのを感じます。古いダイバーが顔を合わせたときによく出る会話が「パラオのブルーコーナー、昔ほど面白くなくなったよね…」だったりしますし。

この先どうなっていくかは解らないものの、温暖化で珊瑚が死滅するだけでも生物相が大きく変わりかねないので「今のうちになるべく楽しんでおこう。10年後、20年後のダイビングは今ほど面白くはないかもしれないから」という思いが働きます。

もちろんこれらは私のダイビング仲間という限られた人たちに当てはまりそうなだけで、もっとサンプルを広く集めたら違ってくるかも知れません。

ただ「もはや日本はモノ作り偏重でやっていかれる段階じゃない」ということは言えそうです。幸いなことに行き渡り感もありますし、人々が必ずしも物質的な豊かさを望まなくなったのだと。

もしそうなら今後は良質なサービスとの結びつきが薄い製造業は生き残りが難しいかも。単にモノを作って売るのではなく、素晴らしいユーザー体験をもたらすためのモノを買ってもらわなくては。

折しもスティーブ・ジョブズ氏の訃報が伝えられましたが、彼がAppleで成し遂げたことが、まさしくそれだったのだと思います。

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