ePubが枝分かれ。Appleの試みは謀反か?

AppleがiBooks 1.2で絶対レイアウトのePubをサポートしたのだそうで。ある仕様のファイルをePub内に追加しておくと1,200 x 1,700ピクセルの仮想ページ上でcssによる要素の絶対位置指定が有効になるのだそうな。

とは言え、そもそもePubは「どんなデバイスでも表示できるようレイアウトを固定しない」が基本コンセプトのはず。ページサイズの固定やら絶対位置指定を許したらそれはもうePubではないような…。

でも個人的には歓迎します。それもありだろうと。「使えない標準規格」より「使える独自規格」の方がよほどあり難いと思うので。まあ、ePubは文芸書に限れば使える部類でしょうが。

世の中(特にIT業界)には標準規格好きの人がいますよね。やれ「自社が開発を止めても、半永久的にドキュメントが読める」などと言って。解らなくもないですが本末転倒だろうと。後世に残せるかどうかを気にする前に、後世に残すべき作品を送り出さないことには始まりません。標準規格準拠でも駄作なら見向きもされず、逆に魅力的な作品なら独自の作り込みであっても人々は何とかしようとするわけです。もちろん魅力的な作品が標準規格準拠なら言うことなしですが、えてして斬新なコンテンツを世に送り出す際は、既製の枠組みを無視せざるを得ないかったりします。他人と違うことをするチャレンジャーが新たな潮流を作り出すわけです。

実際のところAppleの市場支配力と浸透力によってiBooksの固定レイアウトコンテンツを定着させてしまえば、それが当たり前になってしまうと思うのですよね。

それに、今なら固定レイアウトの電子書籍はPDFが最有力ですが、PDFは仕様が複雑かつ冗長で動作が重かったり、DRM面が不十分だったりとデメリットも目立ちます。確かに便利ですが多くを追い求めすぎだろうと。でももし固定レイアウトによるePubが市民権を得れば、電子書籍用途では少なからず代替されるかもしれません。そうして新たなツール/サービス市場と仕事が生まれるわけです。

もっとも、デバイスによって搭載するフォントが違うので、PDFのように普遍的に同一な表示結果とはならないはずですが、もしWebKitに標準的なフォントがバンドルされるようになれば…。

てなわけで私はAppleの試みに賛成です。ぜひ文芸書向けスタンダードePubに並び立つ規格に育て上げ、iBooks以外のePubビューワーでも意図した通りに表示されるように持っていって欲しいと思います。

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